11月9日 ラテラノ教会の献堂 ヨハネ2章13~22節 三日で建て直す神殿
今日も本来は年間第32主日ですが、先週に引き続き2014年以来となる主日にラテラノ教会の献堂を記念します。典礼暦で唯一祝われる献堂記念がなぜカトリックの中心であるサンピエトロ大聖堂ではなくてラテラノ教会なのか不思議に思われる方もいるかもしれません。それはローマ皇帝コンスタンチヌス一世がラテラノ宮殿をキリスト教徒に譲渡して聖堂とされたからであり、歴史上初めての聖堂となったからです。そしてこの大聖堂は「世界のすべての教会堂の頭」と呼ばれるようになりました。ですから、奈良ブロック8教会も含め、世界中の聖堂の献堂記念日でもあります。
今日の福音は、イエスが神殿で商売人を追い出した出来事です。他の福音では受難の前にエルサレムに入城してからの出来事となっていますが、ヨハネでは宣教を始めたころのこととして記されています。
このときイエスはユダヤ人―祭司やファリサイ派の人々と思われます―の非難を込めた質問に対して「この神殿を壊してみよ、三日で建て直して見せる」と答えられました。彼らは「それは無理だ」と嘲笑ったのです。豊臣秀吉が岐阜県の墨俣(すのまた)に一夜で城を作ったという話がありますが、実際は砦のようなものか仮建築であったかと考えられています。「一夜城」自体が伝説であるとも言われています。現在は大垣城をモデルにしたコンクリートの天守閣が建っていますが一夜で建てられたわけではありません。ましてや彼らが言っているとおり、イエスの時代に神殿を建て直すには数十年かかるでしょう。
しかし、イエスはご自分の体のことを言われたのです。「三日で建て直す」とは、三日目に復活したことを表しています。ちょっと飛躍しているようですが、これには商売人を追い出したこととつながっています。
当時流通していたローマの貨幣には神格化された皇帝の肖像があったので、神殿には献金できません。それでユダヤのお金に換える両替商がありました。また、神殿で律法の規定通りにいけにえをささげるために、動物や鳥を売るお店も必要でした。イエスが彼らを追い出したのは、神殿での商売を否定されたというよりも、神殿で礼拝する時代の終わりを告げられたのです。そして三日で建て直された神殿はイエスご自身でした。神殿に行って礼拝するのではなく、神であるイエスのほうからわたしたちのもとに来られるようになったのです。そしてそれは、イエスご自身がいけにえとなって実現してくださいました。
ラテラノ教会とすべての教会堂の献堂を記念する日にこの福音が読まれることには大きな意味があります。教会堂が神殿の代わりとなったのではなく、イエスご自身が新しい神殿です。教会堂はイエスを中心にともに集う場であり、秘跡を行う場でもあります。もちろんキリストのからだである聖体が安置されている聖なる場でもありますが、目に見える教会堂を通して、目に見えない神の愛を思い起こすことができるのです。
(柳本神父)
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