11月16日 年間第33主日

11月16日 年間第33主日 ルカ21章5~19節 髪の毛一本もなくならない

 2週続けて年間主日から離れましたが、今日はようやく第33主日に戻りました。年間第32主日から来週の王であるキリストまでの3主日は「終末主日」と呼ばれ、世の終わりについての内容が朗読されます。その前の31主日は死者の日でしたが例年は徴税人ザアカイの話が読まれます。わたしはC年の朗読聖書を見ていたので、3年前に描いたザアカイさんの絵がミサで使えると思っていたのですが、3年後に先送りされてしまいました。

 今日の福音は、たまたまではありますが、内容的に先週の福音とつながっています。先週はイエスが「この神殿を壊してみよ」と言われましたが、今週は神殿崩壊の予告です。これは具体的には紀元70年のユダヤ戦争においてローマ軍がエルサレムの町と神殿を破壊されたことで実現しました。これはユダヤ人にとって世の終わりにも等しい、恐ろしい体験でした。しかしその後も歴史は続き、神殿は再建されないままユダヤ教徒は祈りと律法を守る信仰のあり方に変わり、キリスト教徒はイエスを新しい神殿として心で礼拝するようになりました。ローマ軍の蛮行は非難されるべきですが、神殿の崩壊は新しい信仰の幕開けのきっかけとなりました。
 しかし、そのような時代には偽キリストや偽預言者が現れると言われます。現代でも人を不安に陥らせて勧誘する宗教や高額の献金をさせる宗教もあります。宗教だけでなく、老後の資金作りを誘う投資詐欺や、「何月何日に大地震が起こる」など、根拠のない情報も偽預言者にあたるかもしれません。
 さらにイエスは恐ろしい出来事が起こると言われますが、イエスも人々を恐れさせようとしたのでしょうか。実はこれらの出来事は弟子たちや初代教会のキリスト信者が体験したことでした。とくに迫害についての予告は現実のものとなりつつありました。イエスは近い将来に来るそのような苦難の時代にも、必ずともにいて支えると約束されたのです。「髪の毛の一本も決してなくならない」というイエスの言葉は彼らにとって、そしてわたしたちにとってほんとうに力強いものだといえるでしょう。

 わたしたちにもそのような体験がおこるのでしょうか?震災や大雨で苦難を強いられる人もおられます。新型コロナが流行し始めた2020年は、世の終わりが近いような不安を味わった方も多いことでしょう。しかしイエスは「世の終わりはすぐには来ない」と言われます。「それから2000年も過ぎているじゃないか」と思われるかもしれませんが、世の終わりは神の国の完成でもあります。いきなり世界の破滅がやって来て、そこに新しく神の国が建設されるというよりも、今の世界が神の国に向かって発展していくということだと思います。
 世の終わりを恐れておびえるのではなく、イエスの教えに従って神の国の種をこの世で見出し、育てていくことが求められているのではないでしょうか。

(柳本神父)

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