7月11日 年間第15主日 マルコ6章7~13節  旅行カバンの中身は?

先週の福音はイエスがナザレで教えられた話でした。故郷の人々が受け入れなかったから、というわけではないでしょうが、イエスは弟子たちを宣教に派遣されます。その際に、イエスは宣教の心構えを伝えられます。

最近はコロナでなかなか旅行もできませんが、旅行の前にはトランクやバッグに何を入れていこうか悩みますね。面倒くさいですが旅行前の楽しみの一つでもあります。私のカバンの中身はというと、カメラ、手帳、着替え、お風呂セット(石鹸、シャンプー、タオル)、お薬、地図帳といったところでしょうか。私は日帰りでもお風呂屋さんに行くので、着替えとお風呂セットは必須です。みなさんもあれやこれやと用意なさることでしょう。しかし、イエスは弟子たちに「杖一本のほかに何も持たず…」と言われます。お金もなしでいったいどうしろというのでしょうか。
お金も荷物もほとんどない状態で旅をするとなると、することは、旅先で助けてくれる人を探すことしかありません。助けてもらうためには、仲良くなる必要があります。そう、友だちを作ることです。いきなり旅先で友だちを作るのはむつかしいでしょうが、弟子たちにはすばらしいお土産があります。それはイエスの福音です。
福音は幸せのメッセージという意味ですから、それを聞いて幸せを感じた人は弟子たちを喜んで受け入れるはずです。弟子たちもその人たちの世話を受け、お互いに仲良くなることができるのです。

わたしたちがイエスに同じことを言われたらどうするでしょうか?せめて「聖書は持って行かせてください」とか、「質問に答えるためのQ&Aをください」とか言いたくなりますね。それは、宣教にあたって、イエスの教えを正確に伝えなければ、間違ったことを教えてはいけないから、という思いがあるからです。いくら友だちになったからといって、いい加減なことを伝えるわけにはいけません。
でも、大丈夫です。伝えるべきは詳しい聖書の内容でもなく、神学的解説でもありません。大切なことは自分の思いを伝えることです。「わたしはイエスと出会ってうれしかった」とか、「こんな体験をしたときに、神さまっておられるんだなあって思った」というようなことで十分です。聖書の言葉や神学書の内容を、正確に暗唱したとしても、それでは思いは伝わらないでしょう。宣教が人を介して行われるものである以上、その人が感じたことを伝えることが大切です。足りないところはイエスが補ってくださるはずです。

そして、言葉で伝えることも大切ですが、何よりもイエスの「隣人を自分のように愛しなさい」という言葉を実践することによって、神の国の福音を拡げていくことができます。コロナ下の今、福音を待っている人は大勢いるのです。         (柳本神父)